通院・入院・手術

#6 入院前にPCR検査を受けてきた。噂のドライブスルーだった。

入院と手術前に必要な段取り。入院患者はPCR 検査を受けて陰性であることを証明しなければならない

要陰性

最初に思ったことは「もしコロナに感染していたら手術は延期になるのか」ということだ。

延期になって困るか?と僕は考えたがもう仕事も復帰の時期もなにもかも未定で手術が延期になっても困ることはなにも無かった。

そして、そんなことは考えてもしょうがないという現実に引き戻される。

なるようにしかならない。というのがこの頃のモットーだった。

とりあえず言われた時間に言われたように入院予定の病院に車で向かう。

事前に説明を受けていたが「車に乗ったままPCR 検査を行う」というドライブスルー検査である。

 妻と一緒に車で病院に向かう。

 自宅から20分程で病院前に着いた。僕の到着を待ち構えている二人の女性看護師がエントランス前に置かれた長机に座っていた。

 彼女達はとても楽しそうに和やかに会話をしていた。

白衣を着ていなければ、まるで久しぶりに会った親友同士が今日のランチをパスタかドリアどっちにするかを熱心に話し合っているように見える。

エントランス前に車を止めた。二人の女性看護師は立ち上がって車の窓に話しかけてくる。

 窓ガラスを開けると、PCR検査用の唾液を入れる為のプラスチック容器を渡されて説明を受けた。

「この容器のこの線を引いた高さまで、唾液を貯めて下さい」

 唾液の量はそんなに必要ないと思っていたけど、これは勝手な憶測だった。結構な量の唾液を必要とする。

こんなに大量な唾液が無いと検査できないんですか?日本の検査技術はどうなってるんですか?
と言いたくなる量だ。言わないけど。

口の中に唾を溜めてはそのプラスチックの容器に貯めていく。必要な量が多いのでなかなか線のところまで貯まらない。

このときの自分の唾液の分泌量が少なかったのでしんどかった。

なかなかこのしんどさが他人には伝わらないので言い方を変えてみよう。

 紙コップの2/3の高さになるまで唾液を貯めて。と言われた感覚に近い。これはなかなかしんどいでしょう?

つまりだ。唾液をただ出し続けるというのは非常に辛い。途中に飲み物など摂取してはならないのである。

1回プラスチック容器に唾液を出すと、しばらくは休憩する必要がある。出ないものは出ない。

 看護師達は病院の玄関前に設置された長机に座ったまま、僕が唾液を出し終わるのをずっと静かに待っている。

こんな天気の良い日の午前に病院入り口の青空の下で長机に座って、目の前の車に乗っているおじさんがつばをプラスチック容器に貯めるのをずっと待っていなければならない。

頭が下がる。

車の中から窓ガラスを見上げる。「どこへでも出かけるがいい」と言わんばかりの挑発的な真っ青な青空。

ゴールデンウィークの真ん中、もうすぐ僕の胃袋を取る予定の病院前の車中で、プラスチック容器に唾液を粛々と貯めているのが僕だ。

こんなところで何をやっているんだろうか。

他の家族は高速道路のSAで地元の屋台料理かなんかを買って食べたり、どこかの遊園地で行列に並んだりしているんだろうなと思う。

・・・

後日PCR 検査の結果が来た。

陰性であることが確定したと同時に僕の手術と入院の日程が確定した。

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